2017.04.13










頂の
泪隠して
津軽富士






奥羽本線 弘前-石川
2017.4


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

悪化の一途を辿る空模様に一喜一憂しつゝも、
泣いても笑っても此れが最後と云う事に御座いまして、
津軽富士を望む跨線橋に参じて御座います。

嘗て、当該車両を使用した列車名の由来となった彼の山は、
既に今生の別れを察するかの如く、
一筋二筋の涙を流してゐた事で御座いましょう。

其の事を、我々に、そして彼女に悟られないよう、
目深に帽子を被り、頂を覆い隠してゐたものと存じます。

斯様な想いを振り切るが如く、
往時と変わらぬ韋駄天振りで、
終の棲家、秋田への帰路を急ぐ列車の姿が、
彼の山の麓に御座いました。

写真機を構えて居られた先達の皆様方、
そしてお見送りにお越しになられた沿線の皆様方。
行く先々で、列車に手を振る光景に相見えたので御座いますが、
彼女の目にもきっと、其の姿がしかと写ってゐたものと存じます。

さて、此の道中では、沢山の先達の皆様方に御引き回しを頂き、
また、出不精な庵主には勿体無い程の良縁を沢山賜りました事、

そして何より、長年の活躍で我々を魅了した大女優の去り際に
立ち会い、其の姿を此の目に焼き付ける事が出来ました事に、
心より御礼を申し上げとう存じます。

こと、近在に御住まいの某巨匠殿、
そして、某・手抜き先生殿や、某・人気先生殿には、
此の出不精の尻を叩いて頂きました事、
拙庵からで恐縮には存じますが、改めて御礼を申し上げます。

此の茶葉、在庫が未だ御座いますれば、
もう少々煎じさせて頂きとう存じます。
もし宜しければ、御相伴賜りとう存じます。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2017.04.12










歓声も
去りし銀嶺
見守りて






奥羽本線 大鰐温泉-石川
2017.4


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

来訪者の歓声が過ぎ去ってから、
早一箇月近く経過した、大鰐温泉スキー場。

阿闍羅山の麓に開けた其の滑走場は、
我々一行が小高い丘の頂に立った時には、
未だ鮮やかな白銀の光を放って御座いました。

而して、本日の主役を待つ内に、
太陽は急速に其の光を弱め、
柔らかな西日が差し込んでいた水田や林檎畑、
そして阿闍羅の山体さえもが、
水墨画の如き単色の薄暮へと引きずり込まれ…。

其れから暫くして、
すっかり灰一色の世界と相成りました画角の奥に、
乳白色の仄かな“∴”が燈ります。

其れは、
彼女の踏み跡に一瞬の彩を与えつゝみるみる内に近付き、
山上で色めき立つ我々を、物憂げな表情で一瞥するのみで
足早に弘前へと走り去って往くので御座いました。

其の後、津軽平野の南端は、一瞬にして、
元の灰一色の世界に戻ってしまったので御座いました。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2017.04.11










春来る
里を抱きて
雪の峰






奥羽本線 白沢
2017.4


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

此の日最初の登攣で消耗した脚に鞭を入れ、
二箇所目の俯瞰地点を目指したのでは御座いますが、

日常の不摂生と自身の体質が祟りまして、
御先達の皆様の足許迄は遂に辿り着けずして時間切れを迎え、
些か中途半端な高度と構図に相成りまして御座います。

また、白沢駅の構内配線や
構造についての検討も不十分であったため、
先頭から数両の足許が乗降場に隠れると云う
大失態のおまけ付きと相成りまして御座います。

併し、深く残雪を抱いた白神の峰々と
遅き春を迎えつゝある白沢の集落、そして何より
此の日の主役が集落を真一文字に貫く様子を
一つの画角に見下ろす眺めは、
当日迄持ち堪えてくれた空模様と相俟って、
何物にも替え難い一献と成ってくれたので御座います。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2017.04.10










息切らし
浅き夢見し
早春賦






奥羽本線 白沢-陣場
2017.4


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

幼少より恋い焦がれ、公私共に慣れ親しみ、
そして、如何様な車よりも思い入れのある車の末期を、
此度、見送る機会を頂きまして御座います。

昭和四十一年、汽車製造株式会社にて
月光型の初号機が産声を上げて以降、
高度経済成長期、多くの人々の長距離移動を支え、

昭和四十三年、
青函連絡の重責を命ぜられ、黄金期を迎えて以来、
今世紀に入って尚、東北新幹線の八戸開業まで、
臨時を含め其の責を担い続けて参りました。

晩年は、日本の首都や某夢の国、そして信仰の聖地へ、
自身の持つ卓越した汎用性と性能を活かし、
東北を拠点に、沢山のお客様を運んで参りました。

其の間も、度重なる故障や部品の生産中止、
点検や修繕等を担う工場職人の減少と云った
数多の困難を乗り越えつゝ、
車齢を感じさせぬ活躍を見る事が出来て御座いましたが、

此の時機に辞世を迎うるなど、
誰が予想し得た事に御座いましょうか。

久しぶりに庵に風を通した本日より暫くの間は、
日本の機械設計並びに製造技術の金字塔の一角を担った、
583系交直流特急型電車の最後の活躍を、
稚拙な一献乍ら、庵主なりに纏めて参りますので、
何かの折で結構で御座います故、
御相伴を賜りとう存じます。

其の一献目は、
最初で最後の訪問と相成りました此の地から、
谷間に谺する電動機と警笛の音に
耳を傾けて頂きとう存じます。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2017.04.03










草生して
歪んだ道とて
前見据え






日本製紙岩沼専用線 岩沼授受所
2017.3


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

傾きはじめた春の柔き光を受け、
大柄な小兵が留置線をまめに往来して御座います。

空模様や曜日に関係無く、
ほゞ一年中、此の小さな街の景色の中を
往来して御座います故、

沿線にお住まいの皆様方の中には、
列車の往来の時刻を時報代わりにされてゐる方も
居らるゝ事と拝察するので御座います。

斯様な街の近在に、庵が在る事の
小さな幸せを反芻しつゝ。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。


2017.03.31










薫風も
間近な道に
油缶






東北本線 船岡-大河原
2017.3


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

年度末、会計を生業とする者にとりましては
当に阿鼻叫喚の渦中に御座いまして、
庵を開ける日が些か少なくなって御座います。

さて本日の一献に御座います。
此方の列車との関係はあるので御座いましょうか、
油缶が列を為し、東北本線を南下して参ります。

日頃、中々目にする事の無い列車で御座います故、
春の盛りを感じさせる青空も相俟って、
個人的には、編成美も殊更に感ぜられて御座います。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2017.03.27










雪山に
桜並木の
枯れ模様






東北本線 大河原-船岡
2017.3


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

春分の日周辺は、
浮世では三連休で在った様に御座います。

庵主は、残念乍ら、
其の三分の二を労働に供しまして、
残りの三分の一にて、庵人の気分転換に
相伴致して御座います。

此の日は当に、
春本番を先取りしたが如き空模様にて、
庵人は意気揚々と歩を進めて御座いました。

此の城跡に整備された
回廊の配置は素晴らしく、
程好く高低差を活かした設えにて、
冬枯れの光景乍ら、立体感の有る散策を
楽しめる工夫が為されて御座います。

一方、重度の花粉症で在る処の庵主は、
厳重に掛けたる口覆いも虚しく、
隙間から侵入する繁殖力の欠片に
独り悶絶するばかりに御座いました。

花粉が止む頃には、此方の展望台も、
亦、求道者で鈴生りになる季節が
やって来る事と存じます。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2017.03.23










小瀑を
見下ろす路の
寒さとて






烏山線 滝-烏山
2017.2


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

此の場所が実に好きで、
似通った一献ばかりと相成り
恐縮至極に存じます。

四〇型気動車が健在の頃に
もう幾度か通っておくべきで在ったと
後悔しても遅きに失する事は
分かって居るので御座います。

晴れて欲しいとは申しません。
遠くに在るからこそ、
せめて雨さえ降らなければ、
何日かは留まって居たい、
斯様にさえ思える良景に御座いました。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。


2017.03.22










背に木々の
前に夕陽の
冬小路






烏山線 滝-小塙
2017.2


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

此の日、午後から急速に青空の面積が
増えて参りまして、

庵へ帰投する頃合いが
刻一刻と迫ってゐたにも関わらず、

此の一献が後ろ髪を大いに引かるゝ原因と
成ってしまいまして御座います。

極く稀に斯様な光景に出くわす事が有ります故、

幾ら好みの車が減ったとは云え、
間も無く庵族が一人増えるとは云え、
弾丸行脚を辞める事が出来ずに居る、
駄目親父と相成るので御座います。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。


2017.03.21










小さな力持ち






日本製紙岩沼専用線 岩沼授受所-岩沼工場
2017.3


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

花粉症も愈々盛りの時期と相成りました
庵界隈に御座います。

御来庵の皆様方に於かれましては、
御様子は如何に御座いましょうか。

庵主は最早、既に崩壊した蛇口の下に
果物の空き缶をぶら下げ、
滴るがまゝに仕て置きとう存じます。

さて、夥しい数の籠を牽き、長き旅路の一翼を担う、
南光運輸㈱殿所有の四〇屯機。

小粒乍ら六〇〇馬力を誇る小兵は、
紙を満載した平台車を連ね、半里程の小路を、
寡黙に往来する日々に御座います。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。