2015.09.06










食卓の流るゝ緑に弾む声





函館本線 渡島大野-仁山
2014.8


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

北斗星、と来れば、何と云つても、
豪華な食堂車“グランシャリオ”かと存じます。

前夜の夕餐こそ、此方で頂く事が出来なかつたものの、
明朝、木古内を過ぎた辺りから食堂の入り口前に並び、
漸く朝食を頂く事が出来まして御座います。

その際、明六ツ初刻(朝五時頃)を回つたばかりだと云うのに、
何と先客の御仁が居られたので御座います。

我が家の北斗星の一宿に於いて、
一番印象に残った出来事で御座いました。

我が家を含め、
ご乗車の皆様方は、斯様な迄に、
此の食堂車での食事を楽しみにして居られたので御座います。

何故ならば──
何しろ此の時既に、日本最後の
「定期列車の食堂車」だったので御座います。

我が家は洋朝食を所望。
食卓一杯に広がる額縁を、
鮮やかな北の緑が、暇(いとま)無く流れて参ります。

焼きたてのパンも、淹れたての珈琲も、
新鮮なオレンジジュウスも、
絶妙な火加減のスクランブルエツグも、
噛むほど肉汁が染み出してくるベーコンも、
今宵の乗客と旅路を伴にして参つた素材ばかり。

云う迄も無く贅の極み、此の日、至玉の味覚を
我が家に齎したので御座います。

時に、
此の車両が、彼(か)の信越本線碓氷峠を往来する
特急電車の用に供すべく作られてから、
此の時丁度四十年。

信越本線碓氷峠、奥羽本線板谷峠、東北本線十三本木峠と
併結する相手も越える峠も変えつゝ幾星霜。

電車から客車への華麗なる転職をも越えて、
第二の人生が遂ぞ先月末に終焉を迎えた事は、
御来庵の皆様方にも、公然周知の事実に御座います。

スポンサーサイト
Secret