2016.10.31










ほのぼのと
線路敷にぞ
ぬぐだまり






東北本線 館腰-名取
2016.10


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

陸奥の屋台骨。
昼下がりの陽光を満々と湛えた線路敷は、
其の風格を微塵も見せぬ程に、穏やかさに包まれて御座います。

去就如何にと目さるゝ719系電車が数分おきに行き交う様子に、
大都市近郊である事を時折思い出させらるゝ線路端に御座いました。

「ぬぐだまり」は所謂「温溜まり」が転訛したもので御座いまして、
弘前ご出身の、某・元放送局社員殿が好んで使ってゐた
言い回しで在った事を思い出した、週初めの夕餉時。

今夜も冷え込むようで御座います。
暖かくしてお休みになられますよう。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

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2016.10.30










高々と
煙棚引き
朝(あした)見ゆ






日本製紙岩沼工場専用線 日本製紙岩沼工場-岩沼授受所
2016.10


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

朝、陽が昇る時刻も、
何時の間にか此処まで遅くなって御座います。

此の日最初の籠列車が、
巨大な紙工場を出て来る頃を見計らうかの如く、
日毎に柔らかさを増した陽光が差し込んで来る、
斯様な日曜の朝に御座います。

さて、今日も庵人を伴って、
庵の由無し事を片付ける事に致しましょう。
秋の声を聞いたと思いきや、程無くして冬支度と云う──
今年の気候の何と落ち着かない事で御座いましょう。

御来庵の皆様方に於かれましても、
呉々も、御自愛下さいますよう。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.28










睥睨






水郡線 西金
2016.10


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

恥ずかし乍ら、
旋回窓ではない五軸機を備(つぶさ)に観察したのは、
恐らく是が初めてあったかと存じます。

所謂「暖地型」と申すので御座いましょうか、
見慣れぬ一枚硝子は、“丸目”の付いた風貌よりも
些か迫力が増してゐるかの如く御座います。

昼ハッの、斜めに降り注ぐ陽光を貫き、
鋭い眼光にて、行く手を睥睨してゐる様に御座いました。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。


2016.10.27










潺を
聞きつゝ小径の
険しけれ






水郡線 西金-下小川
2016.10


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

風光明美な場所と申しますのは、
往々にして、険しい地形が多いように存じます。

だからこそ、車窓にも沿線にも、
多くの人を魅了して已まないので御座いましょう。

久慈川沿いの崖の上で迎える夕暮れ時は、
川面を渡る風が辺りを包みこむ迄には、
もう些かの時間を残してゐる様に御座いました。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.25










晴天に
掲げる誇り
尚高く






水郡線 常陸大子
2016.10


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

久慈川沿いに五軸機を追った合間の一献に、
本日も御相伴を賜りとう存じます。

物の本をご覧頂ければ、
本機其の物の出自は明らかなので御座いますが、
こうして実機を目の前にして居りますと、

何かこう、文献に起こされない部分と申しましょうか、
本機が過ごして参った時間のようなものが、
澄み渡る秋の空気を通じて伝わって来るように御座いました。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.24










暮れ六つの
声を聞きつゝ
街を発ち






東北新幹線 仙台-白石蔵王
2016.10


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

夕餉時の冷え込みも、釣る瓶落としの如き季節を迎えた、
庵近在に御座います。

予てより気になってゐた俯瞰地点に立ちますと、
遙か太平洋まで見渡せて御座います。

手前から、水田、旧市街地、新市街地と順に辿って参りますと、

重機は幾らか据えてあるものゝ、防潮林も何も無く、
物々しい防潮堤と、更地の土色がそのまゝ見ゆる海岸沿いの様子に、
些か息を呑んだので御座いました。

新幹線の車内の皆様からは
見えるか否か存じ上げ兼ねるのでは御座いますが、
復興は、未だ途上である事を再認識した、
愛島丘陵の中腹に御座いました。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.22










翔ぶ空を
映して青き
川と在り






水郡線 袋田-上小川
2016.10


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

鳥取県を中心に、大きな地震が起こったとの由。
東日本大震災の被災地に住む者として、他人事とは思えず、
また、当時の様子が思い起こされて御座いました。

被災された皆様方にお見舞い申し上げ、
早期の復興と回復を、心よりお祈り申し上げます。

日本の山間部の原風景たる久慈川に
五軸機の躍動する姿を求め、
其の畔(ほとり)に降り立ちて御座います。

先ず目を瞠ったのは、其の水の清らかさに御座います。

此処より少し上流に「袋田の滝」が在るそうに御座いますが、
其の瀧の流麗な姿が目に浮かぶようで御座います。

成程、其処で先程来、数多の太公望が糸を垂れ、
「おとりあゆ」なる幟が街道沿いに立ち並んでいる訳で御座います。

清き流れに負けじと澄み渡る碧空に、朱を一つ差しつゝ、
彼の五軸機が足取りも軽やかに翔んで往くので御座いました。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.21










山裾に
取り付く小径の
遠き哉






水郡線 西金-下小川
2016.10


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

思えば遠くへ来たもんだ、とは、
武田鉄矢殿の歌の一節に御座います。

久慈の清流と切り立った山肌の、
文字通り「硲」を縁取る二条の鉄路は、
阿武隈高地を斜めに横断するだけ在り、
其の大半が同様の立地に御座います。

其の事が、
此の谷間の細道に射し込む西陽の柔らかさと相俟って、
庵から然程遠くも無い常陸の國の山中に在って、
尚の事、遠き地へ赴き来たのだなあ、と云う、
感慨めいた心持に拍車を掛くるので御座いましょう。

久方振りに、角籠での長期野点行脚に参じたく為った、
或る崖の上に御座いました。

西金駅に引き続き、
此の場所にて御相伴を頂きました、愛知からの御二方、
そして宇都宮からお越しの御先達の方、
楽しい時間と有り難きご教示を賜り、
改めて心より御礼を申し上げとう存じます。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.20










出立を
待つ昼八ツの
穏やかさ






水郡線 西金
2016.10


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

空気の動きまで止まってしまったかの如く、
穏やかな時間が流るゝ、山合の小駅。

此方の呼吸まで止めねばならぬような感覚に囚われつゝ、
砂利籠列車と暫し向き合うて御座います。

すると、鏡筒を向け、息を潜める庵主に対し、
まるで其の質感を示す分子の運き迄もが
停まってしまったかの如き佇まいを垣間見せ、

先程来、忘れてしまってゐた呼吸と云う行為を呼び起こす
切っ掛けになったので御座います。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.19










山深く
西陽を浴みて
憩う駅






水郡線 西金
2016.10


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

まだ、この時間か──
と思わさるゝ程に、陽の傾きが早くなった此の頃に御座います。

山懐深くに佇めば尚の事、見る見る内に、
谷間が影に飲み込まれて行くので御座います。

山影に隠るゝ直前の陽光は、
機関車も、砰籠も、斯くも優しきもので在ったか、と感慨に耽る、
山合の小駅に御座いました。

当日、現地でお会いした皆様方には、
愉しいお話と御教示を頂き、草庵からで恐縮に存じますが、
心より御礼を申し上げます。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.18










黒光りする
ロツドの束
今、静か






水郡線 常陸大子
2016.10


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

駅前に、蒸気機関車が一両、
静かに余生を過ごして御座いました。

晩年を、水郡線で迎えたので御座いましょうか、
とても大切に保存されてゐる様で御座いました。

夥しい数のクランクロッドが、
蒸気機関車と云う機械の人間臭い部分を
黙して語るが如く在りました。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.17










木陰舞い
涼風至る
河を往く






水郡線 下小川-西金
2016.10


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

茨城県の誇る清流、久慈川沿いに佇んで御座います。

名にし負う其の景観は、沿線も、恐らく車窓も、
さぞ風光明媚の至りに御座いましょう。

本日より今暫く、此の久慈川沿いの景観に
御相伴賜りとう存じます。

扨て、下小川を郡山の方へ向けて少々進みますと、
久慈川を渡る鉄橋が掛かって御座います。

川を渡る機関車を横から眺めようと、
盛金の集落内を右往左往して御座いましたが、
陽の向きと視界の狭さから、結局は此方に落ち着きまして御座います。

併し、詰まりは此方も広い視界を得られずに御座いまして、
あっと云う間に刻を迎え、些か苦し紛れの一献と相成りまして御座います。

とは云え、図らずも、手前の線路に覆い被さるが如き木陰が
晩夏から初秋への移り変わりを醸したであろうと、
今頃になって、庵で独り自己満足に浸って御座いました。
苦笑。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.14










そぼ濡れて
照らす小路の
輝ける






日本製紙岩沼工場専用線 岩沼授受所-日本製紙岩沼工場
2016.9


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

早いもので、神無月も明日で折返しに御座います。
年賀状や御節料理の営業広告も目に付く頃合いに御座いますね。

其処から遡る事、丁度ひと月程となりましょうか、
本日も岩沼の裏小路の一献に御相伴賜りとう存じます。

前照燈と三人工で往く手を凝視しつゝ、
しっとりとした裏小路に入らんとする籠列車を追った此の日。

雨粒の一つ一つに秋の空気が垣間見える中、
機関車の内から外から、
日々変わらぬ、併し一方で、日々変化する道程を
見詰め続ける職員の方々には、
本当に頭が下がる思いに御座います。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。


2016.10.13










ビルヂング
染めて家路の
急きもせず






仙石線 下馬-多賀城
2016.10


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

いつの間にか夜虫も声を潜め、
月明かりも澄み渡る頃合と相成りまして御座います。
皆様方に於かれましては、如何お過ごしで御座いましょうか。

庵では、先日暖房機が登場致しました。
其の僅か二週間程前迄は、扇風機が懸命に羽を回して居りました。
斯様な迄に気候が落ち着かなかった晩夏も珍しいかと存じます。

青春を捧げ学び、あるいは懸命に勤労した皆様方を乗せ、
通勤電車がビルヂングの脇を駆け抜けて参ります。

朝晩の冷え込みも例年に近きものと相成り、
漸く落ち着きを見せつゝある空模様かと存じます。

そして、木々の色付きが日々増して来る中を、
銀色の電車が淡々と行き来するので御座います。

線路端に佇む庵主には、斯様な日常が
何物にも変え難いものの一つとして感ぜらるゝので御座います。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。


2016.10.12










空高く
宇宙の色に
近付きて






東北本線 南仙台-名取
2016.9


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

長月も末つ方、夕暮れの節々に
濃い秋の薫りを感ぜらるゝ頃合いを迎えて御座います。

天高く…と申しますが、此の日の夕暮れは
より一層高みを増してゐる様で御座います。

時に、
庵主の敬愛するバリトンサクソフォン奏者の宮本大路師匠が、
昨日の未明に、若くして、此の空高くへ旅立たれたようで御座います。

師匠、と申し上げましたが、
直接師事を賜ってゐた訳では御座いませんで、
庵主が一方的に敬愛する演奏家の方々に対する敬称に御座います。

師匠は今頃、最早言う事を聞かなくなった肉体を抜け出し、
言葉と其の見た目の通りに、飛ぶ鳥を落とす勢いにて、
彼方の世界でサキソフォンを吹き鳴らしてゐる事で御座いましょう。

サキソフォン奏者の端くれとして、僭越乍ら、
衷心より、ご冥福をお祈り申し上げとう存じます。

全ての空は繋がって御座います。
今にも、頭の上の遥か高みより、
師匠の吹き鳴らす武骨なバリトンサックスの音色が
聴こえて来るように御座います。

本日は些か感傷的な一献と相成りましたが、
御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。


2016.10.11










海沿いに
彩り差して
往く高架






仙石線 本塩釜-東塩釜
2016.10


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

狭い裏路地を抜け、驚くべき勾配の坂道を抜け、
やっとの思いで見晴らしの良い場所に出て御座います。

此の湊街は、物心両面で奥深さを感じるので御座います。

密集する住宅、高低差の大きな街並み、
僅かな平野部を占拠するが如く屹立する起重機、
そして電車の高架。

曇り空も相俟って、色味の少ない町並みには御座いましたが、
電車が効果を通り過ぎた処から順に、
彩度が増した如く見えた、或る高台に御座いました。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.10










川沿いに
連ねる鳥居
くゞる風






奥羽本線 東根-さくらんぼ東根
2016.10


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

今日は、川面を渡る風が殊更に冷たく感ぜられ、
足早に深まる秋を感じる一日となって御座いました。

白水川の堤防の脇に、小ぢんまりとしたお社が奉られて御座います。
聞く処に拠りますれば、豊川の系譜、所謂「お稲荷様」だそうで御座います。

伏見の千本鳥居と迄は行かぬものの、
地元の方々の暖かな信仰心が伝わる鳥居の数々。

川面を渡る風とは裏腹に、不思議と心が穏やかになる
四半刻に御座いました。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.09








昔日の
想い映して
千賀の浦






仙石線 東塩釜-本塩釜
2016.10


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

七ヶ浜町の役場より少し奥へ入った辺りに、多聞山と云う、景勝地が御座います。

陸前富山、大高森、扇谷と並び、松島四大観(しだいかん)の一つに御座いまして、
此の地より太平洋側を望みますと、「偉観」の異名を取るに相応しい雄大な眺めを
恣(ほしいまま)にする事が出来て御座います。

今日は、其の眺望の方向とは真逆に写真機を向けまして、
秋雨前線の雲が取れつゝある塩釜港、其の湾奥の方向を眺めて御座います。

旧くは「千賀の浦」と称され、千年以上も昔は、国府多賀城の
国府津(政府所管の港湾施設)で在ったと存じて御座います。

時が流れた現代でも、海上保安庁の屯所が置かれ、
国防上に於いても、重要な港なので御座います。

国府津であった時代と違うのは、
斜面にへばり付くが如くに為って尚、密集する建築物群と、
近代的な高架の鉄道位のものに御座いましょう。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.07










そぼ濡れて
籠の牽き手の
背中見ゆ






日本製紙岩沼工場専用線 岩沼授受所-日本製紙岩沼工場
2016.9


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

か細い線路を往くにしては些か長い籠の列を、
小さい乍らも武骨な機関車が、ゆっくりと牽いて参ります。

夥しい数の籠の一つ一つが、
此の小さな機関車に確たる信頼を寄せてゐるが如く見え、
其の信頼の源は、此方に小さく写ってゐる
機関士殿かと拝察するので御座います。

折角の連休にも拘らず、明日は又、天気が崩れる様に御座います。
野点の行脚に行かれる方も、御住まいでゆっくりされる方も、
気温の変動が大きい昨今に御座います、
十分に御自愛下さいますよう。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.06










階段の
遠き旅路に
憧れて






東北本線 館腰
2016.9


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

郊外の住宅地にある小駅。
階段を上ると直ぐにプラットホームが在ると云う
至極単純な作りの駅に御座います。

様々な行先の電車が行き交う様子が
階段の下からも見て取れる手軽さからに御座いましょう、

些か庵事に飽き、遠き旅路に思いを馳せたくなりますと、
体力維持を口実に、此処まで散歩に興じるので御座います。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.05










幽かな陽を集むるが如くに疾(はし)る





東北本線 名取-南仙台
2016.10


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本日も、御来庵賜り、誠に有難う存じます。

陽はとうに山陰に隠れ、
コンクリートの塊も林立する電柱も、
灰色と空色を混ぜた暗がりに染まろうとして御座います。

此の時季にしては突き刺すような夕陽に灼かれた数分前を
遠き昔日にするが如く、
足音も無く冷気が忍び込んで参ります。

僅かに残ったルーメンを掻き集むるが如く、
その綽名にそぐわぬインバータ音を響かせ、
金太郎が北を目指して参ります。

自らの進路に、此の時間にしては十分過ぎる程の
光を照らしつゝ。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.04










潤うて
緑の絨毯
鈍色に






日本製紙岩沼工場専用線 岩沼授受所-日本製紙岩沼工場
2016.9


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本日も、御来庵賜り、誠に有難う存じます。

細かな雨粒が、タイヤ工場の裏路地をしっとりと濡らす、
静かな昼下がりに御座います。

姿の見えぬ内から、
原動機と車輪の軋む音が微かに聞こゑて参ります。

そして、線路際に佇む庵主の手前で、
緑の絨毯に吸い込まれて行くので御座います。

やがて雨粒の密度も増し、緑の絨毯も湿気を帯びるに連れ、
徐々に音を吸い込まなくなると同時に、
機関車の姿が徐々に大きくなって参ります。

籠の列が目の前を通り過ぎる頃には、
線路もすっかり鈍色に光る程の
本降りの雨となってゐるので御座いました。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.03










幾つもの
目を掛け気を掛け
忍び足






日本製紙岩沼工場専用線 日本製紙岩沼工場-岩沼授受所
2016.9


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

此方、日本製紙岩沼工場の専用線には、
六箇所の踏切が御座います。

其の内、遮断機が設置してあるのは、
僅か一箇所に御座います。

此の事が大きな理由かとは存じますが、
此の専用線を走る全ての列車は、
先頭に監視要員を搭載して御座います。

往く手を照らしますのは、
前照燈、運転士、監視要員御二方の、
実に計八つに御座います。

僭越乍ら、安全は何事にも最優先かと存じます。
重ねて、此れだけの人員を配置しつつ、
即停車出来る速度で、線路上をそろりそろり。

輸送業務を受託してゐる企業の
繊細で熱い心意気を感じた一時に御座いました。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.02










暮れ六つの
土手は急がぬ
奥州路






東北本線 太子堂-南仙台
2016.10


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

暮れ六つの土手の傍らにあるお宅の台所では、
夕餉の準備が始まった様に御座いまして、
食器の音や瓦斯を点ける音等が漏れ聞こえて参ります。

時を同じくして、山の際まで降りて来た太陽が、
土手を柔らかく照らして御座います。

籠の列を従えた金太郎が、
淡く朱色に染まる土手に差し掛かって参ります。

日没を迎えたからと云って、此処から慌てる訳でも無く、
隅田川迄の道のりを、只管(ひたすら)に進むのみに御座いましょう。

本日も、御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.10.01










蝸牛さえ
追い付く脚も
躍動す






日本製紙岩沼工場専用線 岩沼授受所-日本製紙岩沼工場
2016.9


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

蝸牛(かたつむり)も追い付きそうな速度で、
籠を満載した車列が工場へと進んで参ります。

原動機のけたたましい音が過ぎ去ると、
台車と線路の軋む音だけが、
やゝ暫く住宅街に響き渡るので御座います。

其の音に包まれ、
街の片隅の鉄路も力強く息衝いてゐる事を実感した、
雨の昼下がりに御座いました。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。