2016.03.30










終(つい)の路(みち)そつと見守る有珠の山





室蘭本線 黄金-崎守
2016.3


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御来庵頂き、誠に有難う存じます。

視界の向こうに聳える有珠山が荒れに荒れ、
此処を含む広い範囲に甚大な被害を及ぼしましたのは、
記憶にそう古からじ事と存じます。

此の一献を立てし日は、少々寒風が吹いたものの、
嘗て斯様な災害が在つた事など
微塵も感じさせぬ空模様に御座いました。

降り注ぐ陽光は、
有珠山の持つ粗削りな山肌や稜線をも
嫋(たお)やかに、且つ大らかに見せるもので御座いましょうか。

有珠山の山容とは対照的に、
背後に物静かに控える緩やかな山体──
──恐らくは昆布岳で御座いましょうか。

数々の役者は此処に揃いまして、
白昼を往く一等星に相応しく、
終(つい)の旅路を華やかで、且つ
厳かなものにせしめたものと存じます。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。


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2016.03.28










明けぬ夜の無きを知りつヽ仙后座





江差線 釜谷-渡島当別
2016.3


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本日も、御来庵賜り、誠に有難う存じます。

明けぬ夜は無い、と云いますのは、
自らが甚く落ち込んだ折に自らに云い聞かせる文句として
今日迄広く使わるヽ言の葉かと存じます。

併し乍ら、此方の仙后座(=カシオペヤ)は、
朧気に差し込む鈍い朝陽を前にして、
当に此の日、今にも没しようとしてゐるでは御座いませんか。

春未だ遠き渡島の隅。
行く手を煌々と照らす前照灯の前に、
二度と明くる事の無い夜を
間も無く完抜せんとする。

其の姿に、一抹の寂しさを覚えたのは
庵主のみにあらん事と拝察申し上げます。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.03.26










隧道の温もり苦節経て明日へ





海峡線 竜飛(定)-津軽今別
2016.3


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本日も、御来庵賜り、誠に有難う存じます。

本日は、新幹線が遂に北海道へ
営業区間を延伸した事を記念致しまして、
此方の一献を煎じて参りとう存じます。

此度の行脚行程とは順番が前後し、
些か恐縮に存じますが、
何卒御相伴賜りますよう、お願い申し上げます。

彼の隧道は、産声を上げてから三十余年、
我が国史上初の、鉄路に於ける青函連絡の重責を、
在来線列車による運行と云う形で、
担い続けて来たので御座います。

ナウマン象が渡道して約二万年(諸説あり)。
青函連絡船就航より百十余年。
こだま号の登場から約半世紀。

其の隧道にも、愈々本日を以て、
夢の超特急、弾丸列車が出入り致します。

雪解け間も無い津軽半島。
列車接近警報が朧気に響く頃、
坑口から濛々と立上る湯気は、
隧道の供用開始以来、快速から特急迄、
数多の列車の息吹を運んで来たので御座います。

本日此度より、此の湯気は、
彼の弾丸列車の息吹をも
伝うるので御座いましょうか。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.03.23










桟橋も朧夜汽車に相対す





函館本線 函館
2016.3


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本日も、御来庵賜り、誠に有難う存じます。

日本で唯一の客車急行と相成りました「はまなす」。
其の雄姿を記憶に留むるべく、函館山の頂を目指します。

息を荒げ、滴る汗も其の儘に、一年半振りに見渡す宝石箱。

市井の皆様方が大凡寝静まつた夜半にも拘らず、
其の輝きは衰うる事無く、砂洲の形を明瞭に示して御座いました。

嘗ての連絡船の桟橋は、而して砂洲の片隅で、
往時の栄華を朧気に留めて居りました。

軈て、汽笛一声、
眠れる街を起こさぬよう、甚(いた)く静かな足取りで、
桟橋に向かって彼の列車が滑り込んで参ります。

物言わぬ摩周丸は、滑り込んで来た夜汽車を、
其の深い懐で受け止めんとするが如く、
退役して尚、静かに桟橋に佇むので御座います。

其処に庵主は、函館山の頂で、
体の芯まで冷やさんとする強風に穿たれつゝ、
ある種の錯覚を覚えたので御座います。

函館駅の線路は、未だ摩周丸の待つ桟橋まで
繋がつて居るのではないか、と。

さて此度は、此の頂より、
此の日を以て北日本から消滅する夜汽車を追い、
道南へと馳せ参じて御座います。

丸二日間お世話になりましたうっかり鉄殿、
そして、現地でお世話になりました皆様方に、
草庵からで甚だ失礼かとは存じますが、
心より御礼申し上げます。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.03.19










Steel Beams Runnin'





常磐線 逢隈-岩沼
2016.3


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御来庵頂き、誠に有難う存じます。

夥しい量の鉄骨が、
得も云われぬ物量を以て、
線路際に佇む者に語り掛けて参ります。

其れは、若しかしますと、
此処に鉄路を通さんとする先達の皆様方が、
一本一本の鉄骨に刻んで来られた想いかも知れません。

或る早春の夕暮れは、秋の陽と似通うが如く、
思いの外、足早に過ぎ去るので御座いました。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.03.14










赤べこの跳ぶ山峡も水温み





仙山線 熊ヶ根-陸前白沢
2016.3


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御来庵頂き、誠に有難う存じます。

此の頃は、茶柱の立つた一献ばかりで恐縮至極に存じます。
僭越乍ら、縁起物故、気長に御相伴を賜りとう存じます。

座学に徹底的に向かない性分の庵主、
時機に似(そぐ)わぬ其の悪行(?)を察してか、
道中、遂にお天道様の御機嫌が戻る事能わず。

其の儘、気儘に角籠を駆つて辿り着いた
熊ヶ根の渓谷に写真機を向けますと、

空模様の所為もあり、
予想以上に冬枯れの様相を色濃く残す
木々や岩肌が画角を占拠し、
一献に仕立てる事に、些か辟易して御座います。

此の冬枯れの色で画角を埋めようと割り切つて
写真機を下に振つた其の時、
鼠色の空模様からは想像も付かぬ程、
鮮やかな蒼緑色を湛える広瀬川が。

谷底にひつそりと横たわる、早春の鮮烈な流れに
驚きを隠せずに居た庵主を尻目に、
赤べこが、実にゆつたりと、谷を跳んで行つたので御座います。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2016.03.11










照らしつゝ進む路こそ険しけれ
険しけれこそ後ずさるまじ






常磐線 逢隈-岩沼
2016.3


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御来庵頂き、誠に有難う存じます。

五年、が経ちまして御座います。
生憎、持ち合わせる語彙の少なさ故、
形容する言葉も既に底を尽きたように
感じるので御座います。

揺すられ、浸けられ、干され、浴びせられ、汚され──

自然の脅威で片付けるには、
余りにも惨い時間に御座いました。

併しそれでも、
仲間で在り続けて頂いていた方々、
物心両面で支えて頂いた様々な皆様、
そして何より、御来庵頂いている皆々様に、
心より御礼を申し上げる次第に御座います。

其の凡てのお陰様を持ちまして、
今の庵が御座います。

後ろが何方か時折確かめつゝ、
前進有るのみに御座います。
今後とも、御指導、御鞭撻賜りますよう、
宜しくお願いを申し上げます。

又の御来庵を、
お待ち申し上げて居ります。

2016.03.09










日溜りの先に広がる青に蒼





東北本線 岩沼-槻木
2016.2


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御来庵頂き、誠に有難う存じます。

此の場所は、一度御教示頂いてから、
個人的に心に付く場所となり、
幾度か訪れて御座います。

故に、相似たような一献が続きます事を
ご容赦頂きとう存じます。

さて、如月にしては、
春の盛りの如き陽気であつた一日。

田圃のほぼ全てに柔き陽が行き亙り、
どれ一つ転寝でも、と云う気になつた
或る早春の休日に御座いました。

2016.03.04










各々の照らす家路の寡黙さに





東北本線 館腰
2016.2


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本日も、御来庵賜り、誠に有難う存じます。

下火に成りこそすれ、
インフルヱンザの猛威が残つてゐる様に御座います。
御来庵の皆様方に於かれましては、
お変わり御座いませんでしょうか。

庵界隈は、如月弥生とは云え、
未だ冬の様相に御座います。

立てた衿とマスクが目立つ夜の駅。
御勤めを終えられた帰路に御座いましょうか、
皆様一様に言葉少なで、
到着した電車へと吸い込まれて参ります。

プラツトフオームの隅から
まるで門外漢の如く其の様子を眺めて居りますと、
夜の底冷えが又一段と、足許から
駆け上がつて来るので御座います。