2015.10.28










溢れ出る文字の伝うる長き旅





東海道新幹線 東京
2015.9


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

大展望と伴に一献を供した野点から一変、
日本国の交通の要衝での一献に御相伴賜りとう存じます。

小田原、岐阜羽島、米原と、
東北に居りましたら、まず目にする事の無い地名が
掲示板から溢れんばかりに並んで御座います。

異国情緒とは過ぎた表現かとは存じますが──

飽く迄も、庵主に取りましては、
嗚呼、遠くへ来たものだと思わずには居られぬ、

然様な光景に御座います。

スポンサーサイト
2015.10.26










ふくの浦臨みいづるは白式部





羽越本線 女鹿-小砂川
2015.10


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

雄々しき荒磯を眼下に従え、
目が覚める程の白き肌を携えた紫式部が、
奥ゆかしく歩みを進めて参ります。

式部殿の初秋の装いを祝すかの如き穏やかな海は、
岩場を洗う事も忘れてしまった様に御座います。


2015.10.21










海原に溶け込む空の高さとて





羽越本線 吹浦-女鹿
2015.10


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

此れ以上何も申し上げる事の無い、
秋晴れに御座います。

其れでも矢張り、雲と云うのは
沸き出でて流れ来る訳で御座いまして、
谷間や線路に影を落としては過ぎ去って行く度に
一喜一憂させるので御座います。

他方、海岸線に視線の先を投じますと、
絶え間なく打ち寄する波にも大小あり、
時には比類なき高さの波濤となって、
此の優美で荒々しき磯場を洗うので御座いましょう。


斯様な時に、
自然の前には、人間と云うのは小さな存在だと
思い知らされるので御座います。

そしてその人間が移動の手段として鉄道を選ぶとき、
其れもまた、自然の中に於いては
小さな存在であると識るので御座いましょう。


2015.10.19










陰陽の遍く暮らし映しける





東北本線 岩沼-館腰
2015.10


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

輪郭に一点の霞無き陰陽は、
相当に巧みな鋏捌きに依る切絵が如く御座います。

些かも逃るヽ事の適わぬ陰影の明瞭さを以て、
遍く御仁の日々の暮らしの内面的な動静を垣間見るに至り、

線路の傍らで、暮れ行く水田を暫く眺めつヽ、
凡る由無し事を自問自答する、
或る日の暮れの七つ半に御座いました。

2015.10.17










人混みに喉を潤す青き帯





東北本線(京浜東北線) 御徒町-上野
2015.9


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

庵主(一行)、
「アメ横」なる商店街に参じて御座いました。

田舎者には些か厳しい人波にて、
人酔いと申しましょうか、
喉の渇きを覚えた頃に御座います。

ふと、斜め上を見遣りますと、
見慣れた炭酸飲料の看板、
そして、一面硝子張りの建物が。

一行に捨て置かれつヽ
やヽ暫く硝子のカンバスを眺めて居りますと、

其の大きな画角の全面に映し出された高き青空の下、
殆ど見分けの付かぬ色の帯を纏うた列車が、
庵主を潤す一献を届けてくれたので御座います。

2015.10.14










格子と青空





東北本線 上野-東京
2015.9


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

東北新幹線に遅るヽ事廿余年。
此度、東北本線の「列車」が、其の真の起点の東京駅まで
乗り入れまして御座います。

之は、東北本線が日本鉄道として開業して以降、
戦後の一時期を除き、初めての事だそうで御座います。

さて、所用にて上野界隈を徘徊中の庵主はと云えば、
某電器店の外階段に張り巡らされた見事な鉄格子と、
その外の光景に暫し茫然として御座いました。

整然と並んだ鉄材、
鉄材に等間隔に区切られた電車、
其の隙間から満遍なく覘く青空。

無機質を極限まで追求した光景に
有機的な営みを焙り出そうと
試行錯誤するのでは御座いますが、

詰まる処、庵主が唯個人的に、
都会の真ん中でちょっとした閉塞感を味わってみたかった、
斯様な話になろうかと。

2015.10.11










圧されつつ負けじと駆けて日々紡ぐ





都電32系統(荒川線) 王子駅前
2015.9


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

東北新幹線の高架が圧倒的な存在感を見せる、
王子駅東口に佇みて御座います。

都電の車の小さゝが際立つかと存じますが、
沿線の皆様の暮らしに決して欠かせぬ程の混み具合にて、

今日も路地裏の電車道を、
着実に轍の音を刻んで行くので御座います。

2015.10.09




拙庵近在にて
2015.8


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

此の度、御来庵頂きました方々が、
平成二十四年の開庵以来、
延べ五千人を超えている事に、
今し方、気付きまして御座います。

斯様な場末の草庵では御座いますが、
ご愛顧頂いております沢山の皆様方に、
この場を借りて、心より御礼申し上げます。

誠に、有難う存じます。

今後とも、気張らず、気取らず、無理をせず、
出来る時に出来るだけの精神で、

かつ、皆様方にもお寛ぎ頂ける一献を目指し、
煎じ続けて参る所存に御座います。

何かの折にで結構で御座います、
今後とも、拙庵へと足をお運び頂けましたら、
望外の幸甚に存じます。


                                 平成二十七年 神無月吉日
                                          魚利庵 庵主
2015.10.09










山路より見下ろす虎の息も切れ





都電32系統(荒川線) 王子駅前-飛鳥山
2015.9


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

飛鳥山の山裾を上る急坂を、人間を満載した一頭の虎が、
息も絶え絶え登って参ります。

その傍ら、更に急な山道を、
同じく人間を満載にした籠が一つ、飛鳥山の山上を目指して
軽々と登って参ります。

都会の夕暮れ時に繰り広げらるゝ、兎と亀…では御座いませんが、
庵主の目には、何処か昔話の一幕であるが如く映ったので御座います。

2015.10.07










雑踏に紛れ見上げるビルと空





中央線 吉祥寺
2015.9


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

庵主の如き田舎者は、斯様な街に来ますと、
ついつい斜め上を見回し乍ら歩いてしまうものに御座います。

何処で空を眺めても、必ず視界に人工物が入ってしまうのも、
天邪鬼に申しますれば、また醍醐味かと存じます。

嗚呼、是は是で、詩的な情景だな、と。

従いまして、縦構図の一献も、
ついつい多くなってしまうので御座います。

2015.10.05










戦無き大砲何処へ征く鉄路





東北本線 東仙台(信)
2015.10


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

氷雨と称しても差し支え無いほど
冷たい雨がそぼ降る機関区の傍らに参じた
神無月の初日に御座います。

旧き盟友・うっかり鉄殿と臨みしは、
先進国で唯一軍隊を持たぬ我が国の、
重火器の大移動に御座います。

そぼ降る氷雨の中、
ゆるゆると場内に進みし
重火器の大名行列は、
庵主の拙い一献に煎じらるヽのを嫌ってか、

其の鈍足にも拘らず、
明瞭な静止画を残す事は
適わなかったので御座います。

うっかり鉄殿には、装備の御解説と、
根拠の無い画角の検討(笑)にご相伴を頂戴致しました。
愉しい一時を誠に有難う存じました。

2015.10.02










山や河つい目で探る銀世界





中央本線 東京
2015.9


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

銀世界と申しましても、雪景色には御座いません。
銀色の塊が天高くまで支配する街にやつて参りました。

此の街には、様々な意味で、
厳しい生存環境を有しているものと
存じては居りますが、

斯様な中でも、此処に暮らす数多の御仁は、
逞しい息遣いを以て、日々生き抜いて居らるヽ事と
拝察致します。

其の日々を支える一筋のメタリツクが、
ホームの隅で同じメタリツクを待つ庵一家の前に
現れて御座います。

感情の無駄遣いをする可からず、とは、
近頃、折に触れ云わるヽ台詞に御座います。

併し、周囲が斯様な迄に無機質で覆わるヽと、
此の目で見ゆる一帯の其処彼処に、
何かしらの“感情めいたもの”を
追いたくなるので御座います。

例えば、運転士殿の表情だつたり、
信号燈上の「2出」と云う表示だつたり、
奥から手前に雲が拡散する様だつたりと。