2015.06.28










隧道に差し掛ゝる燈(ひ)に薫り立つ





石巻線 前谷地-涌谷
2015.5


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

隧道と申しますのは、
殊更に物語が生まれ易い土木構造物であると、
最近、想いを巡らす様になつて居ります。

物言いた気な気籠と、
言を無にして其を受け止むる二本の軌条。
そして、それらを山裾に貫通せしむる、盤石な坑口構造物。

脆弱な機材と軟弱な腕前、
かつ貧弱な語彙を持つ庵主を以つてしても、
斯様に容易く三行の日本語が綴らるゝので御座います。

そして、薫風が織り成す陽炎が気籠の前に立ち上る様には、
其の香りを楽しむ余裕も無く、
甚だ辟易した庵主が土手際の畦に佇むのみに御座いました。


スポンサーサイト
2015.06.24










旅人を待つその巨躯の暖かさ





石巻線 女川
2015.5


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

本日は、惜しまれ乍ら
先月一杯でその役目を全うし勇退した、
40系列気動車の一献に
お付き合いを賜りたく存じます。

其の柔和な躯体は、
数多の旅人を受け入れ続けて幾星霜。

年季が入つた、と申し上げるのも烏滸がましい、
所謂「国鉄の標準設計」の粋を凝縮した、
計り知れない安定感と重厚感が感ぜられます。

此の日の陽気で「暖かい」とは、
自分で申し上げておき乍ら
何やら汗ばむものを感じるのでは御座いますが、

前世紀の機械は、此の日も、
現世紀の若人を、
何とも静かに、そして、矢張り暖かく迎え入れ、
何処の街へと動き出すので御座いました。

2015.06.20




東北本線 南仙台
2015.6





東北本線 南仙台
2015.6

***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

頭幕を追い掛けた、
その後にお付き合い頂きたく存じます。
事後談と云う事で、一句捻らずに恐縮に存じます。

結局、旧庵近在から、現在の庵を少々通り越して、
夜の帳の降り始めた南仙台駅まで
角籠を駆って参りました。

いづれも、面白味に欠ける一献になり恐縮に存じますが、
本日は一つの記録として御笑覧頂ければ
幸甚に存じます。

上段の一献左側に煎じられた車は、
阿武隈急行8100系に御座います。
国鉄廃止から一年余り後の昭和63年の生まれ。

右隣に控える国鉄485系特急型車とは
世代を異にするのでは御座いますが、

分割民営化黎明期を、
方や新製車、方や引退間近の老体として、
共にみちのく路に現役として生きた車に御座います。

そう云つた意味では、
国鉄丸森線と暫定開業後の阿武隈急行を知る身としても
個人的に感慨深く、
一献を煎じた次第に御座います。


2015.06.17










平成を駆ける昭和の声聞こゆ





東北本線 太子堂-南仙台
2015.6


***************


御来庵頂き、誠に有難う存じます。

生え抜き千両役者の御登場で御座います。
然し、生憎頭幕は“回送”に御座いました。

皆様こぞって訪れる定番の地点と思いきや、
庵主の後にお見えになったのは
近在にお住まいの御仁、お一方のみ。

存外に長寛な撮影となり、
激しく照りつける日差しと相俟って、
定番中の定番とも云える画角乍ら、
印象深き一献と相成りまして御座います。

平成に生まれし橋梁を、昭和の名車が参ります。
長声一発、中年の耳が良く慣れ親しんだ音程を残し、
其の健脚も持て余し気味に上野へと向かったので御座います。

因みに、庵主の両の足は、この日、
草履の鼻緒の形が繰り抜かれた日焼けと
相成りまして候。



2015.06.14










深緑の迫り出し諸共陽に染めて





東北本線 白石-東白石
2015.6


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

只々、頭幕を拝見せんがために、
庵事の合間を縫って、旧庵の近在まで馳せ参じて御座います。

山体が路の際まで迫り出す、其の名も“崖下”。

本日は、珍しく、お二方ほど、ご相伴を頂戴致しました。
情報弱者の庵主が、日頃より何かとお世話になっている方々に御座います。

どちらの乗り場に陣取るか、はたまた駅を少々離れるか。
或いは縦にするか横にするか──
若干の議論もまた、愉しいものに御座います。

結局庵主は、霞みつゝも強烈な橙色を放つ夕暮れの中、
線路に今にも雪崩れ込まんとする
圧倒的な深緑に目を奪われたので御座います。

結果、何やら消化不良な画角に相成り、
大変に御見苦しい一献となりまして恐縮に存じます。

“T木の巨匠(笑)”殿、“今もTbを吹ける”殿、
本日はお世話になり、誠に有難う存じました。

2015.06.10










蛙(かわず)道籠満載の洋白紙





石巻線 前谷地-涌谷
2015.5


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

水鏡、と行けば云ふ事無き、
だったので御座いますが…

空は、洋白紙にも似た淡き色で御座いまして、
之は果たして「五月晴れ」と申すので御座いましょうか。

五軸天国に生きる汽籠が、
其の姿を、いと朧気に映しつつ、
里山から築堤に躍り出て御座います。

そして庵主は畦道に佇み、
其れをカエルの独り言と共に眺めておりました。



2015.06.06










広大な陽だまり歩み緩む畦





石巻線 鹿又-佳景山
2015.5


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

何処までも広がる田園、
其の隅にひっそりと佇む小高き丘の名を
“欠山”と申します。

ある皐月の正午前、
庵主は欠山の尾根の北端に
独り陣取っておりました。

此の時期、
海からの冷気を含んだ風は、
其の名前を「山背」と変え、
愈々内陸を伺おうとする事が多う御座いますが、

此の日は海風も入り込むのを躊躇うほどの
暖かな空気がどっかりと居座っておりました。

尾根に居候する庵主。
その背後に立つ中学校からは、
吹奏楽部がひたすらに練習していると思しき音色。

時折聞こえる軽快なリズムと、
畦の向こうに響く長寛なジョイント音との穏やかな和声を
陽だまりの隅で愉しんだ半刻程に御座いました。

2015.06.03










牽く者が曳かれ漆黒纏う途(みち)





国道四号線 名取-館腰
2015.6


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

彼の名機が愈々末期との報せを頂き、
此の頃すっかりと重くなりし腰を上げ、
庵の近在へと馳せ参じて御座います。

奥州路の電化亜幹線に於いて一時代を築いた、ED78電籠。
Be-2-Beの軸配置により、仙山線等の様な丙線への
重量級電籠の導入を促進した、功労者に御座います。

而して其の目覚ましき活躍も、
貨物輸送等を取り巻く情勢の変化を主な要因とし、
徐々に職場を減らす形と相成り、
平成十二年を以て形式消滅と成ったそうに御座います。

その後、数ある兄弟の内の一両は、
自らの生涯を控えめに語り継ぐが如く、
加瀬沼近在で静かに過ごして御座いました。

征き(ゆき)は鉄路自走、退り(かえり)は陸路曳行にて。
昭和の役者がまた一人、姿を消すので御座います。

其の花道を、密やかに彩りながら──

2015.06.01










空からの汽車を預かる花一輪





仙台空港線 仙台空港
2015.5


***************

御来庵頂き、誠に有難う存じます。

みちのくの玄関口より空路を引継ぎ、
杜の都までを繋ぐ、空港線。

駅舎の向こうの空を見つめ、
列車を預かる彼女の思いは何処に御座いましょうか。