2015.09.02










新旧の世紀寄り合う駅に立ち





津軽線 青森
2015.7


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御来庵頂き、誠に有難う存じます。

暑さに弱い庵主は、
今朝より戻りし夏の日差しに
大変辟易して御座います。

去る七月、斯様な酷暑の狭間に、
台風崩れの低気圧と伴に訪れた北の終着駅。

──而して、“北の終着駅”と云うのは、
前世紀までの綽名に御座います。

今宵も、
其の時代の青森駅を知らぬ
新世紀産まれの列車が、
其の時代の晩年より
駅と苦楽を共にして来た列車の、
出立の刻に相まみえるので御座います。

おそらくは、其の末期の刻まで、
見守る事に御座いましょう。

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2015.08.19










異邦人遥か大地の其の先へ





津軽線 青森
2015.7


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御来庵頂き、誠に有難う存じます。

此方の御仁、日本の夜行急行列車を御利用とは、
相当な日本通に御見受け致し候。

度胸の無い庵主が外国に参じる折には、
特急列車に乗るのが関の山かと存じます。

しかも、「手荷物」たる自転車を携えて、
座席車に御座いますから、

日本の運輸規則にも精通し、
体力も十二分にお持ちである事と拝察申し上げます。

引き締まつた体躯で自転車を軽々と持ち上げ、
一抹の澱み無く車内に吸い込まれし此方の御仁。

海底を潜り抜けた其の先で自転車を組み立て、
再び走り出す御仁の目には、
如何様な光景が広がるので御座いましょう。

2015.08.17










ひつそりと名乗る縁は華三輪





津軽線 青森
2015.7


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御来庵頂き、誠に有難う存じます。

人目を憚(はばか)り、
連結面でひつそりと其の名を主張する
三輪のはまなす。

晩夏から初秋にかけて結実し、
食すと甘酢の如き味との事。

縁を偲ぶにしては、見た目にも些か先鋭的乍ら、
此の列車の歩みし歴史と、
此方の愛称板の奥ゆかしき事に触れ、

今夏の拙庵には、
此の華を添ゆる事に致したく候。

扨て、季節の上でも折り返しの立秋を過ぎ、
突如として気温も下がって御座います。

今後とも、御来庵の皆様方に於かれましては、
お体御自愛下さいますよう。

2015.08.12










出発(しゆつたつ)に交はす笑顔の遠からじ





津軽線 青森
2015.7


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御来庵頂き、誠に有難う存じます。
また、残暑お見舞いを申し上げます。

遥か北の街を目指す列車の小窓から、
少年と笑顔を交わす一人の御婦人。

少年は、ご婦人の御親族、或いは、
お孫さんで御座いましょうか。

ご婦人は、早々に着座するなどせず、
さりとて出入り口を塞ぐでも無く、

小さな御親族のお見送りを、
穏やかに受けて居られるので御座いました。

人生は、屢(しばしば)、
旅路に準(なぞら)えらるゝものと
存じて居ります。

其の距離ばかりで無く、
其の先を過ごす時間の長さも、
言葉を介さず共有出来る縁(えにし)を指して、
人々は「絆」と申すので御座いましょう。

お盆の時期に御座います。
拙庵も、家族共々、
生家へ赴き、故人へ手を合わせ、
感謝申し上げる数日間に致す予定に御座います。

2015.08.09










犬も伸び寛ぎ此方を見るで無し





津軽線 青森
2015.7


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御来庵頂き、誠に有難う存じます。

暑さも一段落した様子に御座いますが、
御来庵の皆様方に於かれましては、
息災で居らるゝ事と存じます。

伝統の青い客車の側面に大胆に描かれた、
一頭の犬。

其の傍らでは、座敷…ではなく、
夏休みに入ったばかりの童子が幾人か、
楽しそうに談笑して御座います。

件の犬は、上下を白き一本線に挟まれた
そう広くもない場所にて寛いで御座います。

何処を見遣る訳でも無く、
当に「吾関せず」な趣に御座いますが、
其の裏側に広がる車内の座敷は、
如何程の広さに御座いましょうか。

私事に御座いますが、庵主は遂に、
座敷の広さ、或いは寝心地を経験出来ぬまゝ、
此の犬つころを見送る事に為るので御座います。

然りとて、此の顔に御座いますから、
胸を覆う寂しさ等と云つた感情は、
相応に和らいでしまうので御座います。