2017.04.29










襟整えて望みしは





東北本線 館腰-岩沼
2017.4


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

愛島の丘の稜線に其の身を沈むる直前、
刹那の閃光を放つ陽光が、
鋭い角度で車内に射し込んで参ります。

相応に揺れる列車内では、其の先頭に立ち、
微動だにせず前方注視を続ける
乗務員の方の姿が御座いました。

丁度其の時、
列車まで射貫かんばかりの斜陽を照り返し、真一文字の襟が、
車内に鮮明に浮かび上がったので御座います。

直線的な容姿を持った車両と、
恰も気持ち迄一つに為るが如く。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

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2017.04.28










宙を跳び
水を濁さぬ
日々の脚






常磐線 逢隈-岩沼
2017.4


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

「夕暮れ」と云うだけで、之だけ画を為せる場所が、
庵主の巡回経路上に在ったのかとさえ思えた、
一日の終わりに御座います。

其処には明らかに流れが存在する筈、
併し、水面の揺らぎは極僅かにて、
鉄が擦れ軋む音すら、素知らぬ顔をしてゐるが如く
御座います。

或いは、河を跳び渡る列車が、
新参者である事を自覚してゐるが如く、
相当に気を使ってゐるので御座いましょうか。

此の気遣いが、やゝもすると、
背後に林立する工場群の騒音さえも
掻き消してゐるのかも知れないので御座います。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2017.04.27










路地裏の
風も素知らぬ
電話箱






東北本線 館腰-名取
2017.4


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

庵近在を徘徊中、
些か庵主の琴線に触るゝ存在を
見つけて御座います。

携帯電話機の普及に拠り、
すっかり見掛無くなった公衆電話。

自身の現状、或いは行く末を察してか、
律儀に傾いた状態で其処にぽつんと
立ってゐたので御座います。

路地裏の電話箱を素通りして
吹き来たる風の冷たさに気付き、
其の出所に目を遣る時、

今をときめく貨物列車が、
飛ぶ鳥を落とす勢いで踏切を通り抜けて行く処に
御座いました。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2017.04.25










眺むるは
末期に添ゆる
残り雪






奥羽本線 白沢-陣場
2017.4


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

お陰様を持ちまして、多忙を極め、
涙が出る日々を送って御座います。

何処からか風邪まで貰って来てしまい、
頭を徒然に揺すられつゝの日々に御座いますが、
御来庵の皆様方に於かれましては、
息災で御座いましょうか。

さて、此の一献を持ちまして、愈々当に、
庵主と此の大女優の邂逅は終焉を迎うる事と
相成りまして御座います。

庵主の人生に於いて、
最初で最後と成るであろう此の場所で、
谷間に谺する電動機と警笛の音に耳を傾けつゝ
其の時を迎えた体験と記憶は、

恐らく、墓場まで大切に持って行く
事に相成るので御座います。

此の上無く愉しく、また千載一遇の機会を与えて下さいました、
某・手抜き王殿、修行僧殿、雨宮殿、Fファッツ殿、油屋殿、
御相伴は叶いませんでしたが某・逆光番長殿、
現場から夜会に至るまで御相伴・御指南を頂戴した皆様、
そして某・U鉄殿に、心より御礼を申し上げる次第に御座います。

日々無くなり行く列車、また新たに登壇する列車。
今後とも、其れらの日常を切り取る一方、
新たな主題を見つけ、庵事の合間を縫い、
多くの皆様方の御指導、御鞭撻を賜りつゝ、
馳せ参じる所存に御座います。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2017.04.24










夕風を
突きて散らすは
高き空






東北本線 南仙台-太子堂
2017.4


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

昨日は、拙庵宗家並びに宗家所縁の親族が一堂に会し、
御先祖の皆様方の御供養を営んで参りました。

拙庵の雑事の多さも相俟って、
佳き日和と佳き列車に相見える機会が
元々少ない拙庵に御座いますが、

神事仏事や冠婚葬祭は何より優先すべきとの
宗家の方針も、理解に難からじ事と存じます。

斯様な訳で御座いまして、
先週運行されし客車列車の復路にて点てた一献で、
文字通り、お茶を濁しとう存じます。

太陽は既に其の身の大部分を山手に隠し、
背後の川面を渡る風も、冬の空気を吹き返したが如く
御座いました。

電動機の熱気に僅か乍ら心を温めたので御座いましたが、
彼の列車が通り過ぎて後に運んで来た風の冷たさの方が勝り、
些か首を竦め乍らのお見送りと成ったので御座います。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2017.04.22










「先輩…今まで言いづらかったんスけど…」
「どうしたの改まって」
「今まで、待避線に行っとけだとか、スジ譲れだとか、
 散々生意気言ってスンマセンした」
「そんな事、別に気にしてないわよ、逆にその若さが羨ましかったわ」
「いやー…」
「それよりあんた、潮風とか大丈夫なの?
 時々高波も被る職場なんだろうから、ちゃんとこまめに診てもらうのよ、
 私みたいになってからじゃ遅いのよ」
「…先輩!」
「何よ、急に大きい声なんか出して」
「…いやその…相変わらずの人気っすね…」
「ふふん、何言い出すかと思ったら…この世界じゃ、年増の方がモテんのよ」
「ええ?」
「それと、おだてたって何も出て来ゃしないわよ、
 碍子の1本に至るまで、共通部品なんか1つも無いんだから」
「はぁ…それよりっすね」
「何なの今日は?いつもより顔が赤いわよ?」
「──今まで、有難うございました!」
「はいはい、あんたは先が長いんだから、頑張って稼ぎな」


……




奥羽本線 秋田
2017.4


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…などと云う遣り取りがあったか否かは存じませんが、
斯様な光景に見えたので御座いました。

昨日今日と、拙い小芝居に御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2017.04.21










「先輩…ホントに今日で引退なんですね…」
「そうよ、あなた達にも色々とお世話になったわね」
「そんな事ありません、それに、ただ速いだけの私たちと違って─…」
「どうしたの?何も泣く事じゃないわよね?」
「…だって先輩は、お客様が寝ている間に目的地まで送り届ける事が出来るじゃないですか」
「やあねえ、私なんてもう、ただ図体がデカくて鈍足なおばちゃんよ」
「私だって、客室にベッドを積んで走ってみたかった!」
「あなたたちはまだ若いわ、これからそんなチャンスが無いとも限らないじゃない」
……




奥羽本線 秋田
2017.4


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…などと云う遣り取りがあったか否かは存じませんが、
斯様な光景に見えたので御座いました。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2017.04.20










陽も傾ぎ
翳を浴む迄
四半刻






東北本線 南仙台-太子堂
2017.4


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

日中は、初夏を思わせるが如き熱気を齎した太陽も、
山の頂に其の身を半分ほど隠した頃合いに御座います。

先客でお見えになられてゐた御仁への挨拶もそこそこに、
兎に角動きが鈍重な庵主は、
架台と鉄瓶をもそもそと取り出し、
据付に取り掛かるので御座います。

そうこうしてゐる内に、
此の時季本来の肌寒さが徐々に足許から忍び寄り、
庵主の影も見る見る伸びて参ります。

鏡筒の前に手を翳したり鉄瓶の向きを変えてみたりと、
自らの脳内で、ああでも無いこうでも無いと
雑念が大半を占める思いを徒然に巡らせて御座いまして。

未だ、日中の熱気を帯びた電気機関車が
空冷機の音もけたたましく其の姿を現したのは、
些か雑念が残ってしまった、其の時で御座いました。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2017.04.19










銀嶺に
里の薄墨
温む空






東北本線 船岡-大河原
2017.4


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

三寒四温とは申しますが、
矢張り、暖かくなる季節と申しますのは
心も踊るものがあるかと存じます。

此の日は、恰も夏の如き陽気に御座いまして、
些か霞んではゐるものの、向こうに見ゆる滑雪場の白さが
涼しさを誘う程に御座いました。

お客様を鈴生りに載せ、福島へと向かう花見列車と
蔵王の峰々を柔かく繋ぐ、薄墨の列。

此の並木は何処までも続くが如く在り、
此の光景其れ自体も亦、何時までも続くが如き
錯覚を覚えさせるので御座います。

一方で、此の古き良き時代の産物につきまして、
之を維持する事も亦、容易では無いものと存じます。

旧式の機械接合を多用した構造を持つ車両の
補修修繕は、言わずもがな熟練の勘と技術を
要するので御座いますが、

こうした職人の皆様方の多くも御高齢と相成り、
或いは既に御退職されてゐるものと存じます。

鉄道に限らず、
人と人との有機的な繋がりを以て為さるゝ技術の伝承の大切さも、
此の陽気の中に在って、些か乍ら感じた次第に御座います。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。

2017.04.18










空高く
紅の盛りの
零れ落つ






東北本線 船岡-大河原
2017.4


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本日も、御来庵頂き、誠に有難う存じます。

庵主が幼稚園児であった三十数年前迄は、
斯様な光景が日常で在ったとは、
今となっては想像も付かないので御座います。

毎年、宮城県内の国鉄路線の普通(快速)列車が
一日ないし二日間乗り放題となる、
初詣自由切符なるものを父より買い与えられ、
彼の趣味に濃密に付き合わされて来た(?)結果
今日の庵主が在る訳で御座いますが、

其の際、白石駅迄行った折に、
留置線に大量に打ち捨ててあった四三系一般型客車の姿が
妙に強烈に印象に残ってゐるので御座います。

また、仙山線にて面白山へ滑雪に行った折、
当時まだ若かりし祖父に乗せてもらった、
ED76牽引の一般型客車の、ごった返す車内も
脳裏に焼き付いてゐるので御座います。

然し不思議と、此の列車と桜との記憶は
全く以て皆無なので御座います故、
此の年になって、殊更に新鮮味を覚える処に御座います。

何のかんのと申しましても、
我が家は結局、親子三代、遺伝子級にて連綿と続く
趣味人一家なので御座いましょう。
さて、四代目の登壇とは相成るので御座いましょうか。

当日お会いした諸先達方、
短い時間では御座いましたが、
愉しい一時を、誠に有難う存じました。

御相伴賜り、誠に有難う存じました。
又の御来庵を、心よりお待ち申し上げて居ります。